GenesisPlanA’s diary(ジェネシスプランA・ダイアリー

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ん?撓み?何故DDはソリッドに感じるのか~ハンコンに関係するベルトを含めた構造についての話です。

(○・∀・)ノ マイド!!ジェネシスです。

 

今回はベルトについてのお話も含みます。

 

巷ではDD(ダイレクトドライブ)はインフォメーションがソリッドだ。とか、ベルトドライブは撓(たわ)む。とか、言われていますが、その撓みと感じる原因は何か?という部分に触れていきたいと思います。

 

尚、あくまでもユーザー目線とエンジニアとしての個人的な分析などを含んでます。メーカーにとっては非公開な部分が多いですが、内部構造と設計からの考察や、部分的には主観で物事を言っていますので参考程度に御覧になって下さい(笑)

私なりに纏めてみました。

 

◻️構造を考える

ハンドルコントローラ(略してハンコン)の内部には動力を伝えるモーターが備わり、それをプーリーやギアを介してトルクやキックバック感を伝える機構を備えているのがFFB(フォースフィードバック)付きのハンコンです。

thrustmasterやFANATECなどはベルト機構、ギアを介しているのがLogicool製のハンコンに大別されます。

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Logicool製のハンコンに備わるギアはきりもみ状のヘリカルギアを採用していますが、ギアには山と山の噛み合せの部分にほんの僅かな隙間を儲けてあります。完全に隙間を噛み合せるとゴリゴリとした感触が出てしまいますので、目で見て分からない位の僅かなクリアランス調整がされています。バックラッシュとも言います。この機構により撓みとは皆無で、トルクが発生した時にはゴリッとした質感と共にリニア且つソリッドな質感をステアリングに伝えてくれます。

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対してベルトドライブはどうかと申しますと、モーターからステアリングボスの回転軸までの経路にプーリーを介しますので、ハンコンのタイプによっては撓み(たわみ)感を感じる事があります。

 

◻️ベルトの構造ってどんなの?結構頑丈なんです!

 

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ベルトの歴史は長く、一般的な自動車や工業用機械、家庭用の掃除機など、モーターから動力を伝える手段としてフレキシブルなベルトが使われるケースが多かったですね。今や自動車に関してはタイミングベルトは金属製になり、切れてしまう事は無くなりましたが、それまではベルトが普通に使われていました。

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ベルトの基本構造は引っ張られた時に伸びない様に芯線にグラスファイバーが入っています。タイヤにも使われる繊維で非常に丈夫な素材なんです。人の力では当然伸びないですし、先にも触れました自動車のタイミングベルトにも同じような構造の物が使われていましたので、その丈夫さは確かな剛性感があります。

複雑に屈曲され、且つ高速で回転されるのでフレキシブル性が求められます。芯線の外皮にクロロブレンゴムなどを採用している事が多いです。ギザギザの歯先は磨耗を防ぐためにナイロンを使ったりしますので適度に噛み込み、そしてその歯先も耐摩耗性をが必要なので耐摩耗に強い繊維やカーボン繊維などが使わてます。(※この辺の素材の選定や設計はメーカーによって違います)

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話は横道に反れてしまいましたが、話を戻します。

ベルトはこの様な構造により回転方向への伸びは殆ど皆無で、俗に言う「撓み」を感じる原因となるものは別の部分のパーツや構造に起因するものがあります。

 

◻️何故ベルトドライブ構造が必要だったのかを考える

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こちらはthrustmaster製のT-GTの内部構造です。径の異なる2本のベルトを採用しており、ステアリングボスの主軸側には山の大きなベルトを採用してます。ベルトとベルトを駆動させるためにモーターの出力とのバランスで回転比を儲けて設定されていまさので各々の回転するスピードは微妙に違います。例えばモーターは同じでも、ベルトを駆動させるプーリーの径のサイズによって伝える力が変わるのです。

また、ベルトとプーリー、そしてベルトテンショナー(遊びを抑えるローラー)の距離感があります。

 

回転比に関しては、皆さんも自転車やバイクに乗っている時にハイギア側とローギア側へとギアチェンジした際に、蹴り出す力の変化を体験されている方は多いと思いますが、それと同じく、これらもギア=プーリーの径の違いで、加わる=感じる力が変わります。

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対してFANATEC CSL等も同じくベルトドライブを採用していますが、先に触れたthrustmaster製のハンコンと大きく違うのは、大径のプーリーとベルトの太さ、抱き込み角の広さで、且つ高出力に耐えれる構造をしています。ベルトテンショナーも極力、メインプーリーに近しく、遊びは皆無です。これによりベルトの撓み感は、ほぼ無きに等しく感じ、ドライビングにはダイレクトな感触がだけが伝えられます。

両者の設計を見比べますと、FANATECはプーリーと、ベルトの抱き込みの面積、プーリーからギアまでの距離が極端に短い事が写真を見て頂ければ分かると思います。

FANATECは搭載しているモーターそのものがパワフルであり、thrustmasterはプーリーの径で力を増大させる機構を有してますので根本的に力の掛かり方が違います。

撓み感は、この駆動軸までのベルトが接触していない距離でも感じる部分なので極力ムラのないソリッドな質感をステアリングに伝える工夫がされているのがFANATECになります。

 

◻️撓み感はベルトの伸びではない

実はベルト以外に撓み感を感じる要素があります。それはモーター出力そのものも起因してます。ステアリングをきっている最中に踏ん張る時に、トルクに逆らう反力として働きます。その反力はプーリーを介し、モーターへと伝わりますが、モーターの出力が小さいと回転したい方向とは逆方向に力が掛かります。押し戻される力が「撓み」を感じる要素の一つでもあります。

Logicool G29はギアドライブですがソリッドな感触の中に同じような「撓み感」と称するフィーリングが感じ取れます。

 

◻️モーターそのものの設計が違う

最近流行り始めてきたダイレクトドライブ(俗に言うDD)は、従来のモーターの設計とは違います。

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モーターには様々な種類があり、従来より搭載される事が多かったものは俗に言うブラシレスモーターと呼ばれるものです。代表的な構造はこの様になってます。

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thrustmasterなどに搭載されているT-M.C.Eと見比べますと、オードソックスなブラシレスモーターを採用している事が分かります。

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このオードソックスなブラシレスモーターは、ブラシ付きのモーターの進化系であり、ブラシレスモーターのはしりでもあります。今や小型のものはドローンにも採用されていますよね。

今のところベルト式のハンコンに搭載されている中で最も強力なモーター搭載グレードはFANATECのCSW V2.5で8Nmになります。

何故ベルト化が必要だったのか?というところにポイントがありますが、先に触れましたプーリーの径でトルク感を増大させる為にベルトを介した造りになっていたと考えられます。

モーターそのものも押し戻される反力に負ける部分もあったりします。

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さて、今や流行りつつあるダイレクトドライブ(DD)は構造こそは公開されていませんが、モーターそのものをパッケージングした造りになっています。しかもモーターそのものの内部の大きさが違います。

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その外観から見えて来るのは強力なトルクを生み出す工業用AC/DCモーターにも構造が酷似しており(※メーカーによって微妙に設計が違う)、これにヒートシンクのボディと組み合わせ、背面に備わるIC、又は別体のBOXで細かな制御を実現出来ています。この様な機構はOSWのダイレクトドライブにも見られる構造です。

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強力なモーターを搭載する事でプーリーなどでトルクを増強する必要性もなく、まんまモーターを搭載する事でシンプルに纏められているのがダイレクトドライブの特徴です。

 

◻️撓み感の正体とは一体?

thrustmaster製のハンコンはモーター、プーリー間に距離が少しあるので微妙な遊びが生じます。それはT-GTも同じく言える事です。対してFANATECは抱き込み角を大きく取り、ベルトテンショナーを配置する事でプーリーに伝達するトルクを極限まで減らす工夫が施されています。

撓みと感じられる正体は、モーター~プーリー間の減速比など、間接的な構造故に発生する感覚であり、ステアリングを切った際のモーターへの反力も少なからず起因しています。

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何も介さないモーターそのもののダイレクトドライブはガッチリ感が、モーターそのものが強烈なトルクを生み出す設計のものであるので、シャープであると感じる。入力に対して瞬間的なトルクの逃がしもコントロールされている。その差だと思います。

解像度を数値で表そうとすると、それほど驚く様な大きな差は無く、機構を介さないシンプル且つシャキシャキとしたトルクの加減がシャープであり、ソリッドだと感じる部分に差が出ているのだと思います。単純に出力特性が違うのです。

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撓みと感じる正体は間接的な構造とモーターそのものの特性が起因しているものと考えられるのです。

オードソックスなスタイルであるベルトドライブはマイルドに感じ、ダイレクトドライブはソリッドに感じる。コレだと思います。

 

さて、長々と説明してしまいましたが如何だったでしょうか?

 

あくまで構造や個人的な経験則、そして知見で物事を言っていますのでご了承下さい。

 

今回はこの辺で。

 

それでは!また!

アディオス!!( -`ω-)b💕